【完】 After Love~恋のおとしまえ~
その日は、大好きなリリーシュのマロンケーキも色あせて見えて、食欲がわかなかった。
「食べないの?」
「食べるよ」
フォークを刺してひとかけらを口に運んだけれど、いつものようにおいしくは感じない。だけど
「おいしい?」
サトシの問いかけには、強がって「おいしい」と答えた。
とはいえ、ふたくち目を口に運ぶ気にはなれなくて……
フォークを置いて小さく息を吐いたあと、私は意を決してサトシの目をまっすぐに見つめた。
「話があるんでしょ?」
「あぁ……でも、やっぱり後でいいや。考えが変わった。この店で話すのはやめる」
「どうして?」
「この店は、俺たちの思い出の店だから。この店で、友里の涙は見たくない」
何それ。
そんなことを先に言っちゃったら、これから私が泣くようなことを言うぞって予告しているようなものじゃない。
これから……別れ話をするんだって、先にバラしているようなものじゃない。