【完】 After Love~恋のおとしまえ~
「彼女、イタリアンレストランで翔さんにプロポーズされたとも言ってたわ」
小倉さんの言葉を伝えたとき、彼は「そんなことするわけないだろ」と、呆れたように首を振った。
翔さんは、自分の渡独後もサンドイッチの嫌がらせが続いては困ると思い、彼女を再度問い詰めたのだという。
すると彼女は、犯人は自分ではないが、もしかしたら知人がしたのかもしれないと言い出したそうだ。
そして、もしあの店で一緒にディナーを楽しんでくれたら、もう嫌がらせをしないように知人に伝えると付け加えたという。
近所のその店が雑誌で紹介されているのを見て以来、ずっとその店に憧れていたらしいのだ。
「じゃあ、あの店に連れて行ったら、もうサンドイッチがうちの前に置かれることはなくなるんだね?」
「やめるよう言っておきます」
もちろん、知人がやったというのは嘘で、彼女自身が犯人だろうとは承知の上で、やめるよう言っておくという彼女の言葉を信じてみようと思ったのだそうだ。
そうして、二人はあのイタリアンレストランに行った。
もちろん、そこでプロポーズなど行われるはずもなかったわけだが――