私は猫
あまり自分の居場所を荒らされるのは好きじゃないけど。
菜々子さんはそれを分かってる。
きっと同じような人だから。
彼女の長い髪や 黒い猫目が可愛らしい人
「できましたよ」
と、ご飯を運ぶと嬉しそうにテーブルに移動してくる。
「いただきます!」
早々と秋刀魚を箸で身と取っている。
やっぱり菜々子さん、あんた猫だ。
***
ご飯食べて一息したところで、菜々子さんは寝入ってしまった。
私がこうして朝から動けるのは
お店で飲んでいるのが特別な弱いお酒だからで。
菜々子さんはお客様と同じお酒を飲むし、何より大人気なのだから。
私だって飲めるけど、ママが気を遣ってくれているだけで。
だからこんな風に菜々子さんが私のことを頼ってくれるのが嬉しかった。
「お疲れ様です」
私は菜々子さんにタオルケットをかけ、洗い物をした。
化粧や着付け、接客、この世界のルールなど、みんな菜々子さんから教わった。
菜々子さんが起きたら、後でいろいろ質問しよう。
ふとした瞬間に考える…南さんのこと。
私、思ったより浮かれてる。
猫が珍しくしっぽを振った。
鼻歌を歌いながらお皿を洗う私を菜々子さんがじっと見ていたことなんて知らずに。