あかいさくら
 それから、二週間位経って、同じ公園に行った。昨日大雨が降ったせいか、梅の木に沢山あった花びらは殆んど地面に落ちてしまっていた。まだ、あまり人が歩いていないらしく、赤いそれは綺麗なまま濃い茶色の土の上に張り付いていた。木の下だけ赤いじゅうたんが出来ている。なんとなくじゅうたんを避けて東屋へ向かう。この天気でまともに座れるのはそこしか無い。待ち人がやってくるまでの間に服が濡れるのはご免だ。

 東屋に着く前に私は足を止めた。というのも足元にある水溜りも気にせずにブランコを漕ぐこの前の双子がいたからだった。今日も親御さんはお仕事なのだろうか、周囲に大人の姿はない。立ち止まったはいいが、話すことを思いつけずにいたので、再び東屋を目指そうとした。その前に、

「梅のおねえちゃーん」

「こんにちはー」

 子どもたちから声が上がった。

「こんにちは、楽しそうだね」

「楽しいよー」

「ゆーと、競争してるのー」

 少し古いせいか、きぃきぃと軋んだ音は、足元の水溜りと合わせて、ブランコを一層危ないものに見せた。それすらも楽しいのであろう二人は、レインコートと長靴という格好で、準備がいい。

「せーのっ」

 ――トサッ
 掛け声と共に履いていた長靴を勢い良く脱ぎ飛ばした。長靴はブランコの柵を越え、少し先の芝生の上に落ちた。

「ちぃの勝ちー!」

 嬉しそうに喜んだのは女の子――ちぃちゃんの方だった。確かに赤い長靴はほんの少し青い長靴より先にあった。負けたのが悔しいのか、ゆーと呼ばれた男の子の方は不貞腐れた顔をしている。

「靴とってくださーい」

「水溜りはばっちいからお願いしまーす。」

 さっきまで平気でいたのに、と思いながらもそれを拾って渡した。

「ありがとうございまーす。」

 間延びした声を揃えてそう言いながら、ブランコの上で長靴を履くと、そこから降りて私のところまでやってきた。

< 2 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop