寂しがりやの猫
「俺、最初ちょっと引いてたんですよね、中河原さんのこと」

田村が おもむろに話し出した。


「キツそうだし、怖そうだし。ああ、これがよく言うお局様って奴かって」

田村は 笑いながら私を見る。


「アハハ… そっか」
私も笑いながら紙パックのコーヒーをチュウと吸った。

「けど 全然違ったんですよね。 優しいし、気さくだし。後輩想いで。なんか意外でした」


「そうかな。でもキツイことはキツイでしょ」


「ああ、でも仕事には厳しい人だなと思いました」


「うん」


田村も コーヒーをチュウと吸う。


「いい人だな、と思って。それで なんで結婚しないんだろうって不思議に思いました」
「そっか」

風がピュウと吹いて髪が乱れた。

「大丈夫ですか?寒くないですか」

「大丈夫。全然平気」

私は 田村を見て笑った。
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