寂しがりやの猫
「着きました」


「え」


「降りて下さい」


何もない高台の場所に ポツンとベンチがあった。


「ちょっと寒いかもしれないから」

田村は そう言って私に膝掛けを貸してくれた。


「どうぞ」


ベンチに座り、コンビニのサンドイッチとコーヒーを差し出される。


「アハハハ… 」


私は とうとう笑ってしまった。


面白い。面白すぎる。田村って愉し過ぎる。


「なんですか?やっぱり 気に入りませんでしたか」


「ううん。スッゴい素敵。景色綺麗だね」


ベンチに座ると 街がよく見えた。

自分達の会社も。その周りの会社や工場。マンション。色々なものがよく見えた。


「こんなところよく知ってたねぇ」


「はい。仕事さぼってたまにここでぼんやりしてました」

「ハハハ… 悪い奴。真面目なふりして」


「そうですね。悪い奴です」

田村は 遠くを見ている。

何故かそれが今日は男前に見えた。

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