寂しがりやの猫
「中河原さんの気持ちは判ったけど」

落ち着いた照明のレストラン。

社長は 真っ直ぐに私の顔を見た。

「すいません… お気持ちはありがたいんですが」

社長は 食後のコーヒーをゆっくりと一口飲み、少し視線を下に外す。

「どうにも 納得いかないな。中河原さんがその人と結婚しない理由」


「あ、それは だから…」


「若いから。未来の邪魔したくない。だろ」
社長は もう一度 私をじっとみた。

「俺は 諦めの悪い人間なんだ。だから 今までやってこれた。その人より 俺のほうが中河原さんには 相応しいと思うな」

「……」

言葉が出てこない。

確かに その通りだと思った。
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