寂しがりやの猫
「実はさ、私も好きだったんだよね、田村のこと」

ビールの後、カクテルを呑みながら 結城に打ち明けた。

「え!そうだったんですか…」

結城は 全く知らなかった、と目を丸くしている。

「全く アイツって不思議な男だよね。小型犬みたいな顔してるくせに なんか魅力あるんだから」

「アハハ…確かに」

結城は 深いオレンジ色のカクテルをクルクルとかき混ぜながら優しく言った。

「田村くんね、入社したばっかりの頃、私が会社に馴染めなくて凄く辛かった時に 助けてくれたんです」

「そうだったの」

「はい。結城さんの良さは そんな風にすぐに馴染めないとこじゃないかな、って。それが当たり前だし、それでいいと思うって言ってくれて…。凄く嬉しかった」

結城は 頬を赤く染めた。

― 田村らしい。何もかも全部受け止めてくれる大きな心。

私もそんなところが好きだったな…

「そっか… いい奴だよね、田村って」

私は 三杯目のカクテルを飲み干した。
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