寂しがりやの猫
じっと 見ていると 田村がこちらを見た。

―あ…

と 恥ずかしくなり 目を反らす。

何 何~? もう私 絶対おかしいって!
自分であり得ない行動をしている。

まるで片想いの中学生。

昨夜 あんな電話したことを田村に謝ったほうがいいだろうか。

お詫びに 今日はランチおごるよ、とか 誘ってみようか。


つまらないことを考えているうちに 五階に到着し、私達は エレベーターを降りた。


「さっき 後ろからお尻撫でられたよぉ」

結城が 泣きそうな顔で田村に訴える。

「え、ほんとに?」
田村が心配そうに言う。
「気持ち悪い」

「社内でそんなことする人居るんだね、千里ちゃん 可愛いから気をつけないと」

私も 話を合わせる。

結城は はい、気をつけます、と小さな声で言う。

田村が チラッと私を見た。

「中河原さんなら すぐに 腕 捻りあげてそうですね」


「アハハ… 当たり前じゃない!タダで触らせたりしないわよ」

三人で笑いあう。

こういう会話は 日常茶飯事だけれど 何故かちょっと胸が痛かった。
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