寂しがりやの猫
仲澤 真人
秋になり、大阪支社から仲澤が転勤でやって来た。


隣の課の課長になるらしい。


挨拶の後 仲澤は すぐに私のところにやって来た。


「奈都!久しぶりだなあ!元気だったか?」

ちょっと仲澤は アメリカンなところがあり、今にも抱きつきそうな勢いで私の手を両手で握りしめる。


「うん、久しぶり。仲澤くんも… あっと、仲澤課長か」

「いーよ、仲澤くんで。同期だろ?てか お前 結婚は?」

いきなりこんな話をするところも 仲澤らしい。


「まだ 売れてないよー。もう誰も買わないでしょ」


アハハ… と笑い飛ばすと 仲澤は そうなんだ、と笑った。


「じゃあ 遠慮なく誘えるな。いいだろ?」

最後の いいだろ、がちょっとイヤらしく響く。

私は もちろん、いつでもどうぞ、と笑った。


田村が黙ってそれを見ていて、なんとなく居心地が悪かった。

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