寂しがりやの猫
旅館に戻る直前に 田村は 私から離れて先に中に入って行った。
すぐに 探しに来た結城達に見つかり引っ張って行かれている。

私は その姿を見送り、もう少し散歩する為に もう一度外に出た。


月がゆらゆらと揺れて、じわっと滲んで見えなくなる。

あ、れ…?

涙が溢れていた。


寂しかった…
一度 田村の温もりを知ってしまったから、一人の散歩は。

けれど 私は 一人で歩き続けた。

これまでも ずっとこうして来たじゃん。

一人が気楽でいいって思って来たじゃん。

余計なことして 私の心 揺さぶるのは止めてよ。寄り添ってくれる気も無いくせに…。

やけに長い外灯の影を見て、余計に寂しくて泣いた。
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