【短】半透明な愛を捧ぐ
「──な、りいな、里依南っ」
「………お母、さん」
『もう深夜よ?お風呂に入りなさい』
「えっ、うそ」
勢いよく布団から起き上がって時計を見る。
…ホントだ、12時過ぎてる…。
「それにしてもよく寝たわねぇ」
「うん。…お母さん、りつって名前の人知ってる?」
その名前に異常に反応した母は、ため息を一つ吐いて、少し笑った。
「…聞いてたのね。もう、抜け目ないわねー」
「ごめんなさい、」
「ふふ、いいのよ。いつか言わなきゃならなかったんだから」
そう言いながら、あたしの隣に座った。
「りつと言う人はお婆ちゃんの更に曾お婆ちゃんでね、若くして亡くなったみたいなの。そしてお婆ちゃんが里依南を“り”にこだわったのは、ある夢を見たらしいの」
「…どんな?」
「1人の男が、りつと呼んでいる夢。それだけ、それだけだけど何か運命を感じたみたい…里依南も、夢をみたのね」
「うん…」
「お婆ちゃんね、亡くなる前にりつはあの日記を見せるなって言っていたのは聞いてた?」
その言葉に頷いた後、母は目線を下にした。
「…りつのことについて色々調べたみたいなの。そしたらね、一つの手紙を見つけたらしくて直感的にこれをりつには見せたくないと思ったらしいの」