Mary's Boy Child ―お父さんとお母さんはねこになった―
「夫のことや家庭を思って、だけど仕事にも勤しめばいい。頼子さんならできますよ。おれ…、そういう女性、好きですし」
「真樹夫さん…」
「片隅でいいので、お付き合い前提に考えて見てください。将来のことを」
プロポーズまがいなことを口走っているおれは、しっかりと頼子の気持ちを酌んでいるように思えた。
そういえば、今のおれはどうだろう?
何かと喧嘩すれば、仕事のことを当てつけているような。
彼女の仕事に対する情熱は理解していた筈なのに…、先日喧嘩した時も、おれは彼女の仕事を揚げ足にしていた気がする。
『貴方ってわたしの仕事の想いを、いつも理解してくれようとしていたわよね』
ふと頼子に言われ、おれは彼女を見つめる。
白ねこは困ったように鳴いて、『喧嘩したことを思い出しちゃって』と苦笑。
夫婦になると、なんでもシンクロしちまうものなのかな。
おれもたった今、同じことを思っていたところだ。
若かりしおれ達が自然と寄り添うように、ねこのおれ達もそっと寄り添って歩く。
「あれ?」
君達もラブラブしてるの?
振り返って来る仙太郎に揶揄されて、おれ達は誤魔化すように鳴き声を上げた。
昔の自分達を見ていると、少しだけ同じように寄り添いたくなったんだ。
心中で息子に弁解するおれがいる。
きっと頼子も同じように弁解しているに違いない。