樹海の瞳【短編ホラー】
第一章 静寂
 特にどうこうしようとか、考えがあった訳でもない。

 成り行きと言えばそれまでだが、他に適当な言葉が見つからなかった。


 人は指差し、噂するかもしれないが、未来永劫に退屈で単調な生活ほど、苦痛なものは無い。

 添い遂げようと誓い合ったあの人でも、きっとそれでも、心の中の他人なのだから。

 たった一人しか認められない哀れな生き方を、これからもずっと、私は自らの運命(さだめ)としたい。


 当たり外れのない人生があるなら、それを享受する今の人々は幸せなのだろうか。

 犠牲の上に成り立つ快楽を、私はみなと同じ機会に学び、等しく尊ぶのだ。


 あながち、間違っている訳ではなかろう。

 時間は無機質なあらゆる種類の人間を創造するのだ。


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