春、恋。夢桜。
「なぁ、響。こやつを使ってみたいのじゃが……」

「あぁ。そうしてくれると、きっと梨恋も喜ぶと思う」

「本当か?
……って、そうじゃなくての、使いたいのじゃが、わしにはいまいち使い方がわからんのじゃ。響がやってくれんか?」


そう言って麗華はヘアゴムを俺に差し出した。

ヘアゴムのシルバーの部分が、月の光に反射して、少し幻想的な雰囲気が漂う。


俺は、素直にそれらを受け取った。


「麗華、俺に背を向けてくれ」


麗華は、嬉しそうに俺の言う通りにしてくれた。


麗華の髪にそっと手をかける。


梨恋が小さい頃は、俺も梨恋の髪をよく結んでた。


まぁ初めは、男の俺が妹の髪を結ぶなんて恥ずかしくて、嫌で仕方がなかったけどな……

        
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