春、恋。夢桜。
でも、そんな経験も無駄じゃなかったかもしれない、なんて思う。
……いや、これはこれでかなり恥ずかしいから、やっぱり早く終わらせたい。
俺は、綺麗な三つ編みになっている麗華の髪をほどいた。
先端の結び目を取っても崩れないほどしっかりと編まれたそれらを
傷つけないよう、丁寧に1つずつ緩めていく。
長い間三つ編みにしていたせいか
麗華の髪は、パーマをかけたようにふわふわとしたウェーブを描いた。
これを生かすのも良いかもしれないな……
そう思った俺は、中心で2つに分けた髪を、それぞれ耳の辺りで結んだ。
少し子供っぽいかもしれない。
でも、この髪型も、麗華の白い肌や、桜柄の着物、そして可愛らしい顔に似合う気がした。
ぐっと力を込めて、しっかりと結べたことを確認する。
そして、俺はあらかじめ梨恋のに渡されていた鏡を、鞄から取り出した。
「麗華、こっちを向いて良いぞ」