春、恋。夢桜。
 

『それは、私に聞くことではありませんよ。そなたが考えて、お決めになれば良いのです。

もう、花の精をまとめるのは私ではありません。そなたです』


すっぱりと言い切ったその方に

あたくしは何の反応も返せないまま固まってしまった。


あたくしが、花の精のまとめ役。

あたくしが、月美丘の桜の運命を決める。

あたくしが、紅姫……。


次々と体の中を駆け巡る事実で、あたくしはパンクしそうでした。


でも、これだけは確かめなければいけない……――――


あたくしはとっさに、そう思ったのです。


『あの!1つだけ!1つだけ教えて下さいませんか?』

『何ですか?急いで下さいね。私の体は、もう長くはありませんから』


焦っているような、いないような口調で

その方は言いました。


そこであたくしは、急いで話を続けたのです。
< 168 / 237 >

この作品をシェア

pagetop