春、恋。夢桜。
『花の精には……。月美丘の桜の精に、人間をつけることはできますでしょうか?』


これが、よっぽど変った質問だったのでしょうか。

その方は一瞬驚いたような顔をした後で、にっこりと微笑んで言いました。


『その人間が、どのような方かはわかりません。

でも、もうすでに、人間としての役割を終えている方ならば……花の精として働いてもらうことも、可能かもしれませんね』


そこまで言うと、その方はそっと、静かに姿を消しました。


あの方はどのような気分で、あたくしに役目を譲ったのでしょうか。


最後まで笑ってはいましたが、その真意はわかりません。



ですが、最後に聞こえたような気がするのです。


『ありがとう。頑張って下さいね』


という言葉が……



こうして、あたくしは紅姫と名乗り

花の精のまとめ役として生活するようになりました。


そしてあたくしは、1番最初の仕事に取り掛かりました。


それは、あの、月美丘の桜の木の、新たな桜の精を定めることです。


そこで、あたくしはあなたに注目したのですよ。



麗華……
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