春、恋。夢桜。

【二】

「今日はこれで終わりだろ?
部活もないし、お前これからどうするんだ?帰るか?」


授業が終わってから、潤が真っ先に聞いてきた。


「いや……。なぁ、ここの近くに美大があるだろ?
あれの美術展ってまだやってるよな?」

「あぁ。やってるはずだけど……。行くのか?」

「あぁ。ちょっと気になることがあってな……。
何となく1人で行きたい気分だからさ、潤は普通に帰っててくれて良いぞ。悪いな」

「そうか。また話聞かせろよ?じゃ、明日な!」


そう言って立ち上がった潤に軽く手を振って

俺は、自分の荷物を鞄に詰め込んだ。




初めて行く美大は、最寄り駅をかろうじて知ってるくらいで何の交流もない。


道に迷わないことを密かに祈りながら、俺は電車に乗って、その大学を目指した。


駅から歩いて10分くらいの場所にあった大学は、俺の通う大学よりも1回りくらい小さいように思う。


古風なレンガ造りの門の横にあった立て看板をあてに

俺は美術展の会場を探した。


桜ではないけど、綺麗な緑が生い茂る並木道が会場まで続く。


鳥の鳴く声が聞こえるこの空間は

ここが大学の中だってことを忘れさせるくらい、和やかな空気に包まれていた。
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