春、恋。夢桜。
建物に入ると、そこは驚くほど静かだった。


今まで美術展とか美術館とかに全く縁のなかった俺は

この静かさに簡単に馴染むことができない。


しかも専門的なことがわからないから

綺麗だとか面白いだとか、単純な感想しか浮かばない。


額に飾られたいくつもの絵を見ながら

俺はただ、ぼけっとそんなことを考えていた。



一応、この建物の中は作品の種類によって空間が分けられてるらしい。


入口から1番すぐのこの場所が油絵のコーナー。

2つ目が立体的な置物のコーナー。

最後が水墨画などの、少し落ち着いた絵のコーナー。


1つ1つを慎重に見ながら、目的の1年生の絵かどうかを確認する。


名前を聞いてこなかったから見つけられるかどうかは不安だった。


でも、作品の下にあるカードに、作者の名前や学年、タイトルが書いてあるから、問題はなさそうだ。


1年生は、1人しか出してないはずだしな……。


2つ目のコーナーもさっと通り過ぎて、俺は最後のコーナーに入った。
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