春、恋。夢桜。
ガラッと変わった雰囲気に少し驚きを覚えながら
俺はゆっくりと進んだ。


初めに目に入ってきたのは、女性が描かれた綺麗な水彩画。


そう言えば、2年前の不思議な夢を見た後に
俺は麗華のスケッチブックを開いてみた。

麗華が、俺の様子がおかしかったのはスケッチブックを見たせいだ、と疑ってたからだ。


開いてすぐは、その理由がわからなかった。


そこには、拙くて、歪んだ線が並ぶだけだったからだ。


でも、何枚かページをめくるごとに、それらが少しずつ、形になっていく。


花、空、鳥、木、……


細かい部分までしっかりと描かれたそれらは
本当によくできた、綺麗な絵だった。


でも、最後まで成長しない種類の絵もあった。



それが、人物画だ。



着ていた服や、髪型から考えると

おそらく、麗華のスケッチブックに描かれてたのは、俺。


そのできが悪かったから、俺が落ち込んでるとでも思ったらしい。



全く、本当に面白い奴だよな……――――



だから今回も、『風景画の上手い女の子』って言葉に引っ掛かって、ここまで来た。


まさかとは思うけど、もしかして……――――


そう考えながら歩いていると、最後の絵に差し掛かって……


俺は、思わず足を止めた。
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