春、恋。夢桜。
 

どたばたしながら、なんとか食事を終えた後。


俺は、梨恋に頼まれて宿題を教えることになった。


自分の勉強を……とも思ったけど、何となくそんな気分じゃない。


問題を解く梨恋をぼーっと眺める。

その時、ちらっと見えた腕に、俺は息を呑んだ。


算数の問題を深く考え込む梨恋は、そんな俺に気付いてない。


「梨恋。これ、何だ?」

「え?…………っ!!」


俺は、できるだけ冷静を装って言った。

指で、細い腕を指す。


その先に気付いた梨恋の顔は、だんだん青白くなっていった。


そんな様子を、驚くほどまっすぐに、冷静に観察する自分がいる。
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