春、恋。夢桜。
「キョー!リコの頭に乗せた手を絶対に離すでないぞ!ずーっとじゃ!」
びしっ、と人差し指を上に向けると、俺を力強く見上げたカズハがそう言った。
「ずーっと?お、お前っ、この状態がどんだけキツいかわかってんのか!?」
「知るわけなかろう!
じゃが、リコと話せんようになっては困るのじゃ!じゃから、ずーっとじゃ!」
「ずーっとじゃ!」
「梨恋!カズハの真似なんかしなくて良い!」
怒鳴る俺の声とは対照的に
明るい2人の笑い声が辺りに響いた。
梨恋がここまで笑う姿を見たのは、久しぶりかもしれない。
一緒にいるカズハも、すごく楽しそうで……
でもその表情は、いつも俺と話してる時に見せる顔とは少し違うようにも思う。
いつものカズハは、子供っぽく見えて仕方がない。
そこが、カズハの持ち味なんだとも思っていた。
でも今のカズハからは、周りのことを大切にする、大人びた雰囲気が伝わってくる。
そのことに、改めて気づかされた気がした。