苦く甘い恋をする。
肩からずり落ちたバッグを直し、フン!と鼻を鳴らして、踵を返す。


「驚いて損しちゃった。バカバカしい」


「……本当にそう思うか?」


エントランスに響くヒールの音と、長谷川くんの声が重なった。


「コレ。俺の精一杯のプロポーズだけど?」


「…………」


その言葉に、足が止まる。


「俺。クリスマス以来ずっと……。どうしたらおまえを取り戻せるか、そればかり考えてた」


「…………」
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