苦く甘い恋をする。
私の用事なんて、本当は、愛海にメールを送れば済む話ではあるのだけど……。


私の気が変わらないうちに、話を一気に固めたい。


だから私はエレベーターのドアが開く時間ももどかしいくらいの勢いで箱の中から飛び出した。


頭の横、斜めに手をあてて、敬礼の姿勢をとってくれる警備さんに、にこやかにあいさつをする。


それから私は、ロッカールームの入り口に激突するくらいの勢いでIDをかざした。


―――ピー……。


開錠を示す短い電子音。


< 64 / 388 >

この作品をシェア

pagetop