あなたと、恋がしたい
広告代理店の仕事は、端的にいうと、主にクライアントの依頼を元にテレビや雑誌やCMといったメディアを使って企業のPRを代行する仕事である。

果歩のいる企画部は、たとえば化粧品やお菓子や飲料品などの商品パッケージを考えたり、クライアントの要望に合わせたCMや広告の内容を考えたりする部署だ。

クライアントの業種は様々なので、扱う内容も多岐にわたる。CMの他にスポンサーとしてファッションショーなおの大規模なイベントをプロデュースすることもある。

一本の広告を制作するにあたって、企画部にいるプランナーは企画を立ち上げるばかりでなく、営業と一緒にクライアントの元でプランをPRし、無事に契約がとれたら、今度は起用するタレント、カメラマン、美術、デザイナーなどを手配し、現場を監督する仕事もある。

商品がどれだけ魅力的に映るかは各々の相乗効果だが、まず肝心なのは最初の第一歩。クライアントの気持ちを掴むプラン作りだ。その肝心なプランに果歩は煮詰まっていた。

できあがった企画書をまずは上司に見てもらい、部署内のチームコンペや会議にかけるのだが、OKが出ない限り通らない。

果歩の場合はこのところ通らなすぎて、スランプぎみだった。新人が次々に賞候補の作品を生みだしていっている傍ら、果歩のプランはシュレッダー行きが日常茶飯事である。

(入社したての頃は、いい線いってたんだけどなぁ……)

そんな果歩がカメラマンの彼、谷口航介(たにぐち こうすけ)と知り合ったのは、とあるメーカーのCM撮影がきっかけだった。

重たい機材を相手にするだけあって、二の腕から上腕にかけての美しい筋肉、カメラに向かう広い背中に見惚れた。なんて背格好の綺麗な男性なのだろうと思った。



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