あなたと、恋がしたい
一体どんな男性なのだろうと興味が湧いて近づくと、ふんわりと緩くパーマがかかった前髪から覗く、彫りの深い凛々しい顔立ちや、男らしい真剣な眼差しにドキドキした。

まるで彼自身が一つのシーンのようだった。外見はワイルドなイメージだが、こちらに気付き、「よろしく」と挨拶を交わした時の微笑みは、まるで砂糖菓子を舌で溶かしたような甘さで、果歩は航介のギャップにすっかり惚れ込んでしまったのだった。

彼はフリーのカメラマンで主にスチル写真を担当していて、二人は果歩の担当している撮影現場などをはじめ、仕事場で自然と顔を合わせる機会が多くなった。

あるとき、先輩社員が離れているときに予期せぬハプニングが起こった。クライアント側とタレント側の価値観がかみ合わず、現場で揉めてしまったのだ。

果歩が慣れない現場でうまくスタッフを機能させることができず、各関係者から責められてぎくしゃくしていたところ、その場にいた航介に救われたことがあった。

『精一杯やることにも限りがある。だからこの仕事っていうのは、各スタッフがフォローし合いながら作りあげていくんだ。プロなら想定外のことぐらい予め心の準備くらいしないと。揉めても時間だけが無駄。進まないでしょう』

航介の一声で、各関係者の現場への集中力が戻った。

『ありがとうございました。フォローして下さらなかったら、どうなっていたか……』
『もっと堂々としていないと。君がすべてを握っているといってもいいのだから』

厳しいことを言うようで、その声色は労うようなあたたかさがあった。

それからも仕事を通して会ううちに、いつの間にかプライベートでの付き合いに発展した。航介とは美的感覚というかセンスというか、趣味や好みが合った。性格もおだやかで、一緒にいて居心地のいい人だった。

彼のカメラのファインダーの奥に映るものは何だろう。その先に自分は映してくれないだろうか。その真摯で綺麗な横顔だけでなく。そんなふうに想うようになった。

告白したのは自分からだった。出逢ってから半年経過した日。OKの返事をもらったときは、舞い上がるほど嬉しかったのを覚えている。




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