彼女が声を出さない理由(わけ)
友軍は白夜の存在を頼もしく思い、敵軍は鎧纏わぬその華奢な武芸者に恐れおののく。

数で圧倒しようと、多くの武具を揃えようと、その死神の如き武芸者一人に軍の統率を乱され、烏合の衆とされてしまう。

城山の流派が、伝説の武術と言い伝えられる所以でもあった。

しかし。

そんな勝利の立役者たる白夜が、仲間達に不思議がられる。

白夜は一度として、戦の祝勝会に参加する事はなかった。

仲間達が酒を飲み、大いに食い、存分に語らうというのに、白夜だけは席を共にしようとしない。

将自らが褒賞を与えようとしても、辞退までしてしまう。

だが戦場では獅子奮迅の活躍を見せるのだから、味方にとっては何ら不満はあるまい。

不満はないのだが、変わり者ともいえる白夜の奇行に、仲間達は首を傾げるばかりだった。

< 5 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop