男友達
待ち合わせ場所から、お店まで歩いて10分弱。
先週オープンしたばかりの、新しいお店だ。
入ると、もうすっかり席は埋まっている。
それでも、少しまっただけで席に着くことができた。簡単な仕切りのある、反
個室のような空間だ。
「何?どしたの?さっきからエライ無口じゃん。」
そうだ。どうやって聞こうかと、考え込んでたのだ。
「たいがい、そっちから誘ってくるときは悩み事か、愚痴だろ?何?よっぽど
深刻な話なの?」
私は、勤めて普通に明るく、聞いてみた。
「さ、最近来ないけど、彼女でもできたの?」
卓也がプッと吹き出す。
「何かと思えばそんなこと?何?さみしいの?」
いたずらっぽく、でもあっけらかんんと聞いてくる。
「いや、そんなんじゃないけど。」
「うん。できたよ、彼女。」
「って言っても、ま、ね。」
「だって、彼女ができたらいつも言ってくれるじゃない?だから、なんなのか
と思って。ただ、それだけ。」
「うーん。 彼女って言ってもね、ちょっと違うんだけど。」
「何それ?」
「責めない?」
「うん。???」
「旦那がいるんだ、その人。」
「え?ふ、不倫ってこと?」
「そう。」
私は、勢いづけるために飲んだお酒の酔いが、一気に冷めた。