男友達

 心がざわざわした。

 卓也とはずっと、10年も友達で、その間に付き合った彼女のことは全部知って

て、別にご飯のお供の回数が減るなあ」くらいにしか思わなくて、それで…。

 なんなの、この気持ち。

 気分が悪くなって、トイレに駆け込んだ。


 席に戻ると卓也が心配そうに見ている。

 「大丈夫?そんなに飲んだ?」

 「うん。大丈夫。ゴメン。」

 「今日は、もう帰ろっか。調子、悪いみたいだし。」

 「そうだね。ゴメンね、なんかこっちから呼び出したのに。」

 「いや、いいよ。これから行くし。」

 「その人のところ?」

 「うん。」


 また気分が悪くなったけど、ぐっとこらえた。



 家に着くと、化粧を落とす。


 洗面台の鏡を見ると、悲しそうな自分がいる。


 なんなのよ、私。


 急に鏡が曇った。


 涙?


 そんなわけないか。


 でも、鏡はずっと曇ったままだ。


 その場に座り込んで、泣きじゃくった。

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