悪女の恋〜偽りの結婚〜
 一条海って、意外に大胆な奴なんだなあ。これでは中山春が赤い顔をするのは当然だ。明日から会社は二人の噂で持ちきりだろうな……


 ああ、そうか。一条海はそれが狙いなんだな。彼女との仲が公認となり、彼女の不倫疑惑も、どこかへ消えてなくなるだろうからな。流石だ。


 そう感心をしていたら、「三島君」と俺を呼ぶ、さも威厳のある声がした。


「どこへ行っていたのかね?」


「あ、社長。ご挨拶もせず、すみませんでした」


「うむ、まあいい。それよりも君……」


 社長、というか義父は、俺に近付き小声でこう言った。


「昇進の話はどうしても受けてくれんのか? 娘の亭主がいつまでも平のままでは、わしの顔が立たんのだがね……」


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