仕事上手(?)で恋愛下手(!)
由希ちゃんが怒って戻る前に
頂いたカルテのコピーに軽く目を通すと

その女性の名前は
杉本 絢子(すぎもと じゅんこ)さん
85歳の方だった。

その座っている脇の方に近付いて
声を掛けた。

「今日は寒いですね。
今年一番の冷え込みらしいですよ。」

最初はキョロキョロしていたが、
自分のことだと分かったようで

「そうですね。
寒いですね。もう、秋だもんね。」

っと笑顔で答えてくれた。

私の少ない経験からでも、
絢子さんは認知症を疑う可能性が
高いと思った。
認知症自体は怖い病気だけど
対応によっては緩やかに進行するので
発見初期の対応が物凄く
大事になってくる。

カルテ上では絢子さんは独り暮らし
だった。

「私はこの病院で相談員をしている
西村というんですが、今日は
どこが悪くて来られたんですか?」

っと伺うと、
「風邪引いて。」

(風邪?)

整形予約だけど大丈夫かなと思いつつ、

「お母さん歩くの大変そうだから
私、お手伝いしてもいい?」

っと聞くと

「構わないよ。」

っと了解をもらい杖を付く手と違う方の
手を繋いで、一緒に診察室へ入った。
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