【短編】message
2年前と3年前の7月から8月の新聞をしらみつぶしに探していくしか方法はなかった。

―2時間、僕は目がカピカピに乾くくらい活字と見つめあった。

8月7日 午後7時15分頃 ××市××町 浅井英次さん(42)の次女 美奈ちゃん(7)が自宅付近の路上にて刃物を持った男に刺され死亡しているのを近所の男性が発見。

3年前の夏の記事だった。

犯人は近所に住む男で、精神に疾患があり、無差別の通り魔的犯行。

ミナは腹部、頭部など数箇所刺されて路上に放置された。

人気の少ない道であった為に発見が遅れ、病院に運ばれたものの、大量の失血によりすでに死亡してしまっていた。

僕が想像していた以上に痛ましい事件だった。

アサイミナは浅井美奈に違いない。
彼女は現実に存在していた。

殺された子の探し物か・・・。
それを見つけてあげれば、美奈へのせめてもの弔いになるのだろうか。

あの場所からあの子を解放してやれるのだろうか。

初めは僕の言葉に応えたミナの『声』に驚いて、怖いと思った。

だけど、ミナの『声』には悪意など微塵もなくて、僕に恐怖を感じさせるものではなかった。

ミナは自分が死んだことすらわかっていない様子だったし。

どうしても僕には迷子の子どもの『声』のような気がしてならなかったんだ。

導いてあげたい―・・・。

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