【短編】message
泥だらけになったものの、怪我は右肘を少しすりむいただけだった。


「っ痛てぇな。最悪だ」


僕はそのまま濡れた芝生に寝転んだ。


「最悪だ」


大きく開けた口の中に雨が降り注ぐ。


僕のダメなところを全部、洗い流してくれよ。


顔にべっとりついた泥を半袖で拭った。


「神様、なんで僕なんですか?」



天を仰ぐ。
雨が頬を伝って流れ落ちる。


上半身を起こすと、目の前にはアサガオがある。


添え木にたくましいツルを伸ばしていた。


小さなつぼみを守るように、葉を叩きつける雨に耐えている。


健気で美しいと思うのと同時に、樹木や花などない殺風景なその場所に一輪だけ芽をだした朝顔に少し違和感を覚えた。


「お前、頑張ってるんだな」


凛としてたたずむその姿が僕には眩しく見えた。僕なんかとうてい及ばない。


アサガオに話しかける僕。他人から見たらかなりおかしい奴だ。


だけど、そんなことはもうどうでもよい気がしてきた。


帰らなきゃ。


僕は立ち上がり、転げ落ちた道をゆっくりと這い上がった。

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