【短編】message
真美を送り届ける間、彼女はずっとランドセルを大事そうに抱きしめていた。

僕らはあの朝顔を後日ふたりで掘り返しにいく約束をした。

「そういえば、真美ちゃんの話ってなんだったの?」

「すっかり忘れていたわ。あたし、秋からドイツに留学するの。」

「え?」

あまりに突然の出来事に、僕はあっけにとられていた。

「入学した頃から決めてたんだけどね。だから夏休みの後半から発つ予定」

何も言えない僕。


「せっかく知り合えたのにね。それに、美奈のことも」


僕は君を前から知っていたよ、と何度も喉から出かかった。


「この土地を離れたくて、自分から逃げたくて。でもいまはそれを抜きにしても行くわ」


行くなよ。これからだろ・・・。これから僕らはもっと仲良くなれるかもしれないのに。


「うん、いってらっしゃい」


僕は笑う。顔をくしゃくしゃにして笑う。

「あなたに会えてよかった。こっちに戻るのは1年か2年後かな」

こうして彼女の隣にいるのは、導かれたから。

そして、僕はお礼を言わなきゃいけない。

「半分、信じてくれてありがとう」

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