誘惑Baby

季節外れの台風は、どこか心を弾ませ、不安にもさせる。

いつもと違う優子も、同じ様。


昨日、俺の心を覆っていたもやもやは優子の今の様子に打ち消されているようだった。


昨日は元気だったのに。
急にどうしたというのだろう。


「……どしたの?」


知りたいような知りたくないような。
微妙な気持ちの中、問いかけた俺は矛盾しているのだろう。

「……台風、怖くて」


無理してるの、バレバレだっつの。

ギュッと鼻を摘むと黙って見つめてみる。

こうすると優子は、素直になる。
嘘を嘘だと認めるんだ。


「……会いたかった。電話じゃなくて、メールじゃなくて、…陽平に…会いたかったの……」

玄関でも零したその言葉は、一体どんな意味があるんだろう。

いつもなら言わないような、こんな言葉も言ってしまいたくなるぐらい何に苦しんでいるんだろう。

俺に、何を気づいてほしいんだろう。




「うん。…なんで?」

優しく、ほんのり赤い頬に触れる。


「……ちゃったから…」







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