春待つ花のように
 この男、完全にイっている。

 こうなるなら、ここに残らずにノアルと一緒に逃げていれば良かった。国にいる両親や国民のことを考えると、それが出来なかった。

 自分が逃げてしまうことで、戦争になるのではないか。攻めこまない、物資の調達もしてくれる。

 そういう約束のもと、この国に来ることに納得し、どんな扱いをされても我慢してきたのだ。

 自分が選んだこの道のせいで、今度はノアルを危険にさらしてしまう。そう思うと心が痛んだ。

 レイには知られず恋を育み、時がきたら、誰にも知られずにノアルと別れる…ずっとそうなるものと思っていた。

 ゼクスには関係を知られてしまったが、彼は温かく見守っていてくれた。

 自分の考えが甘かった。自分がどういう立場の人間なのかをもっと理解しておくべきだった。

 ノアルとの恋に我を忘れ、最悪のパターンなど考えもしなかった。レイに知られたら、どうなるのか。

 そこまで真剣に考えていれば、ノアルへの想いは心の中に留めていたかもしれない。

 でもそんな考えは今となれば、ただの後悔だ。
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