春待つ花のように
 女性の声に驚き、カインは辺りを見回した。すると少し化粧をしているローラが笑顔で立っていた。

「ローラさん…どうしたんですか?」

「これ、カインさんに…と思って」

 ローラは手に持っていた荷物を彼に渡した。カインは不思議そうに布に包まれている箱を見つめた。

「お店の残りで申し訳ないんですけど、お弁当です。あと布が手に入ったので、洋服も縫ってみました」

「え…いいんですか?」

「迷惑でしたか?」

「あ…いえ。嬉しいです。でも…ローラさんにここまでしていただくなんて」

 カインは申し訳なさそうな顔をすると、ローラは寂しそうに笑った。

「前に役人から助けてもらったお礼といつも酒代を多くくれる感謝の気持ちです。それと、イブから聞きました。私の過去を話したって…ごめんなさい。カインさんの気持ちも考えもせず、押し付けるようなことをして…」

「いえ、人にはそれぞれ他人に言えない過去がありますから。私こそ、貴方が隠しておきたい過去を聞いてしまって申し訳ない」

 カインは頭を下げる。ローラはどんな気持ちでここに来たのだろうか。

 自分が、彼女の過去を知っているとわかっているなら、本当は会いたくなかったのではないか。
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