春待つ花のように
「その言葉、そのままお返しします」

 カインは振り返ると、彼女に向かって怖い顔をした。

「あの女にカインは騙されているのよ! そんなことも気づかないで…」

「騙されている?」

 カインは首を傾げる。騙されているつもりはない。ローラはそんな女性ではない。今回のことはシェリルが悪い。

「そうよ。ノアル様もノアル様よ。あんな低俗な女に引っかかって。何がいいのかしらね…体の相性でも良かったのかしら?」

 カインは彼女の言葉に目を細めると、何のためらいも無くシェリルの頬を平手打ちした。

 彼女は叩かれた頬を手で覆うと、彼の顔を睨み付ける。

「何するのよ。本当のことを言っただけでしょ?」

「何も知らないのに、そういうことは言わないでくれ」

「何も知らないですって? それはカインだって同じことじゃない。あの女はもともとノアル様の女でしょ? それが何でカインがあの女のところに通っているのよ!」

 カインは視線をそらした。確かに、ローラはノアルにとって大切な人だ。

 恋愛感情はない、と話していたがそんなことは定かでない。
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