春待つ花のように
「駄目…なんだ。シェリルと一緒に居てもガーネを失った傷を隠すことは出来ても、癒すことが出来ない」


「何、それ」

 シェリルは不思議そうな顔をする。彼の言っている意味がわからない。

「そろそろ心の傷と向き合わなければいけない。そしてガーネとの過ごした日々を思い出にしなくてはいけないんだ。そう思わせてくれたのは、彼女…なんだ」

 言いにくそうに説明するカイン。

『彼女』イコールそれは『ローラ』ということ。

 シェリルではなく、ローラ。10年も一緒に過ごしてきたのに、自分は彼のガーネへの想いを消化させることが出来なかったというのか。

 彼が望むこと、願うことをそのまま受け入れてきたというのに。何がいけなかったというのだろう。

 彼のすることに文句など言ったこともない。抵抗もしたことがない。それなのに、どうしてあの女にカインを獲られなくてはいけないのか。わからない。

 あんな低俗な女。スラムなど不衛生でどんなばい菌を持っているかさえわからない女の何処に魅力を感じたのか。

 義務を果たさず、権利ばかりを主張する下等な生物たちが住む場所で育った女。
< 173 / 266 >

この作品をシェア

pagetop