春待つ花のように
「嫌よ。『はい、そうですか』って理解のいい女なんかにならないわ」

 シェリルはそう言うと、前にいるカインを追い越してスタスタと歩いていってしまった。小さくなっていく彼女の背中を眺めながら、カインはため息をつく。

 確かにシェリルなら好きになれるかもしれない、そう思っていた時期もあった。

 自分たちは同じ過去を共有している者同士だし、同じ将来を描いている。だからこれから先、一緒に生きていくのに最適だと感じていた。

 でも違う。それは辛い過去から目を瞑っていただけだ。同じ憎しみを持つ者同士で寄り添い、甘え合っていただけだ。

 それでは先に進めない。時は勝手に過ぎていくが、自分の心の時計が進んでいないのだ。

 目を背けてきたことに向き合って、乗り越えなくてはいけない。今はその時期にきている。そう思える。
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