春待つ花のように
「申し訳ありません。これは私のメモ帳なんです。執事の仕事は初めてですので、いろいろ書き込んで速く覚えようと思いまして…。こんな所に置いておくなんて失礼ですよね。本当に申し訳ありません」

 レティアよりも先に本を手に取ったカインが苦笑いを浮かべる。この本は、マリナが大切にしている本だ。

 この本について聞きたいことがある。それを聞かずに、レティアに処分でもされたら痛恨だ。

「そう…。こういうの見っとも無いから、仕事を早く覚えて頂戴」

「はい…」

 カインは軽く頭を下げる。横でマリナがホッと安心しているのが見えた。
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