春待つ花のように
 せっかく深夜に来るのだ、少しは色気のある服装でもいいのに。

 相手から話を聞きだすつもりなのだろうから、色気を使うくらいが丁度いいだろう。しかしそうしないのが、彼女らしさを感じる。

 真面目で職務に一途。女の武器を使うのが嫌い。男と同じラインに立ち、同じ価値観で対応したい。

「その足首に隠してあるナイフは外してもらえるかな。俺は脅されようが、殺されようが、話さないと決めたことは誰だろうと話すつもりはない」

 ゼクスは部屋の鍵を閉めながら言う。彼女にたいしては背をむけて話していることになる。

 部屋に入る一瞬しか彼女のことを見ていないのに、ナイフの隠してある場所を見抜いていた。

 エマは数秒間考え込むと、右足首に隠していたナイフを取り、テーブルに置いた。

「色っぽく迫られたら、話してしまう可能性もあるかも…ね」

 ベッドに腰を下ろして、エマを見ると笑顔で言う。彼女はゼクスと少し距離を開けて立っていた。

「王妃のように…ですか?」

「さあ?」
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