春待つ花のように
「私がそういうことを出来ないことを知っているくせに」

「俺がエマに弱いことも知っているだろう」

 2人は距離を開けたまま、しばらく沈黙する。ゼクスは少し穏やかな表情でエマのことを見つめている。彼女から自分に近づいてくれることを待っていた。

 エマは反対に緊張した硬い表情をしていた。ゼクスが何を考えているのか、わからない。

「2日間、貴方を監視させていただきました」

「知っている。それは王妃の命令で? それとも…」

「私個人の考えです。王妃は貴方を信用しきっている。だからもしものとき、王妃を守れるようにしておかなければなりませんから」

「王妃のメイドってわけじゃないんだ」

「それはどうでしょうね」

「エマが危険なところで働いていないならそれでいい」

 ホッと安心したようにゼクスが言う。

 心配してくれているのだろうか。エマは不思議に思う。

 10年前に鋭い剣を自分に向けて、命の危険を感じさせたのは彼なのに。そんな風にあからさまに、安心した顔をされたら、気持ちが揺れてしまうではないか。
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