春待つ花のように
 再び視線を窓の外に戻すと、マリナは花壇の手入れをしている男を見つめた。あれはどう見てもノアルだ。

 こんな朝早くから庭の手入れに来るなんてどうしたのだろうか。

 マリナはレイがまだ起きないことを確認してから、静かに部屋を出て行った。

「今日は早いのね」

「レイ様が来る日だから、彼が起きる前に庭の手入れをしておくように…って」

 食堂の窓を開けてマリナが声をかけると、ノアルは背を向けたまま答えた。

「ゼクスがそんなことを言ったの?」

「それとマリナ様には絶対に会わないように…とも言われた」

 仕事の手を止めることなく話すノアルに、マリナはじれったくなる。せっかく会えたのに、彼と話が出来たのに、そんなに冷たい態度で接せられるのは辛い。

「会っちゃったね」

「俺は見てない」

「でも話はしてるでしょ?」

「無視すると怒るだろ」

「まあね」

 レイとは大違い。気楽に話せる。

 レイには地雷があちこちに仕掛けられている。それが何の拍子で爆発するかわからない。

 会うたびに、爆発させないように怯えながら会話をする。彼を怒らせないように、最大限に気を使う。
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