春待つ花のように
 エマが居ないため、ユズキが夜も彼女の傍にいることになった。彼女が寝る直前まで部屋で過ごし、後は廊下で寝ずの番をすることにした。

 今朝がた、ロマの側近として政治を任されてたシーラが何者かによって殺害された。愛人宅から宮殿に戻る馬車の中だったという。

 死体の上にはアスラン家の紋章が入った布が置いてあった。

「あの子達、生きていたのね」

 レティアは嬉しそうに言う。

『あの子達』とはきっとゼクスとカインのことだろう。ゼクスは彼女と体を重ねていた。

 多分、レティアから何か情報を聞き出そうとしていたに違いない。無理やり聞き出そうとするなら、姿を出して止めさせようと思ったが、とくに情事だけで何もしてこなかった。

 レティアは自分が利用されようとしていたのを知っていて、誘ったのだろう。

 自ら利用されたいと思ったのか。それとも本当は自分から、彼らに情報をあげたいと思っていたのか。

 でもペラペラと彼らが知りたがっている情報を話しては、逆に不信がられてしまう。

 だから誘惑した振りをして、彼らから聞いてくるのを待っていたのかもしれない。
< 230 / 266 >

この作品をシェア

pagetop