春待つ花のように
「では失礼します」

 夜着に着替え終わり、ベッドに近づいていくレティアを見ると、ユズキは一礼して背を向けた。

「待ちなさい。傷の手当をしてあげるわ。シャワーで軽く汗を流してらっしゃい」

 レティアの言葉に、ユズキは慌てて首を振った。

「いっ…。大丈夫ですから、これくらいの怪我。自分でどうにかします」

「剣を掴んで出来た手のひらの傷だけなら出来るでしょうけど、自分で見えない首の傷はどうやって手当が出来るって言うの?」

「それは…」

「さっさと浴びてらっしゃい」

 小さい声で返事をすると、ユズキは彼女がいつも使用している浴室へと入っていった。

 彼女以外使ったことのない浴室に入るユズキはとても緊張した。自分なんかが、使用してもいいのだろうか。

 国王以外の男性と情事をしても、レティアは誰も使わせなかった。たとえ彼女と別々に入っているとしても、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

「ほら、ちゃんと体を洗いなさい」

 夜着のまま、浴室に入ってきたレティアは気まずそうに、体を洗っているユズキのタオルを奪い取った。
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