春待つ花のように
「あ、自分で出来ますから。服が濡れます…」

「服なんて着替えればいいのよ」

 夜着が濡れるのも気にせずに、レティアは彼の体を洗うとシャワーで流した。そして彼女のベッドにユズキを座らせると、首の傷に消毒液を吹きかける。

「いっ…」

「少し我慢して頂戴。まだ傷口が完全に塞がってないのよ」

 昨日の日中にロイに傷付けられた首は意外と深くまで斬られていた。咄嗟に手で剣を押さえていなければ、彼に殺されていたかもしれない。

 レティアがロイを納得させていなければ、あのままユズキも剣を抜いて戦っていた。そして出血多量で命を落としていたに違いない。

 彼女が応急処置をして医師に診せてくれたからこそある命だ。昨日は、貧血をおこしていてあまり記憶がない。

 今朝から普通に職務についているが、時折世界がチラつくこともあった。

「今夜はこのままもう寝なさい」

 ユズキは瞳を大きく開けると、倒れそうになっていた体を起き上がらせた。
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