春待つ花のように
「今日は廊下で…」

「朝まで扉の向こうで護衛してくれるなら、このベッドで寝たって同じことじゃない」

 消毒液や余った包帯を箱に仕舞いながら彼女は言う。ユズキは手当てが終わったのだと察すると、ベッドから離れて立った。

「一応これでも心配しているのよ。明日の朝、冷たくなって死んでたらって…」

 救急箱を床に置くと、ベッドに座りなおすレティア。全くベッドに近づこうとしないユズキに、彼女の表情は暗くなる。

「ちゃんと言わなきゃわからない? 昨日、ロイに斬られて血を噴出す貴方を見て、どんなに辛かったか…。貴方は10歳以上も年下なのに…ね。でも貴方を失いたくないの。お願い、私の傍にいて。今日だけでいいから。今夜だけでいいから…私を不安にさせないで」

 ユズキはゆっくりと一歩を踏み出すと、あとは無我夢中でレティアに抱きついた。
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