春待つ花のように
我が侭で無理難題ばかりを押し付けてくる彼女とは、違う雰囲気だった。

『今までごめんなさいね』

 レティアに言われた最後の言葉を思い出す。その言葉には心がこもっていた。

 あの言葉がなければ、きっと今もレティアのことを憎んでいたかもしれない。しかし、彼女のあの時の表情と言葉で、彼女が一体どういう人だったのか、考えされられてしまいそうだ。

 本当の彼女とは。彼女は一体どういう人だったのか。我が侭で横暴だったのは、ロマに関心を引きたかっただけだったのかのしれない

「宮殿内で過ごしていても、真相は闇の中か…」

 ノアルの独り言に、我にかえるマリナ。母親がどうやって亡くなったのか、わからないというのはどんな気持ちなのだろうか。彼女は彼の顔を見つめる。

「でも、テーラ様が亡くなったとき、私は別荘にいたから…詳しくは何も知らないの」

 数秒の間だけ2人は見つめあうと、ノアルが微笑む。そして彼は体を起こすと、遠い目をした。
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